【書評】 逆転の発想
- September 29th, 2009
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いまさらながら糸川英夫先生のベストセラーを読破。糸川先生についてはこちらに詳しくありますよ。日本が誇る科学者の一人です。
さて本書ですが、全編にわたって「これからはこうなるはずだ、こういうことを考えなくてはいけない」といったエッセイになっています。初版が昭和57年なので、未来予測も「1990年にはこうなっているはずだ!」といったものが多く、未来人の視点で読み進めることができました。
もちろん予測が外れていたり、さすがそのとおり、といった点もあるのですが、個人的には「今後どういった問題を考えなくてはいけないのか?」という先生の視点がたいへん勉強になりました。
せっかくなのでいつものように個人的にぐっときたポイントをあげてみます。
- 輪の外へ
- 社会から疎外されると・・・
- 数学の意味?
- 無目的の重要性
- 満足感の得られない社会
- May I Help You?
冒頭に宮本武蔵と沢庵和尚のエピソードが出てきます。剣の道を究めてしまったのでこれからどうすればいいのか?と聞く武蔵。沢庵和尚は黙って武蔵の周りに棒で円を描きます。すると武蔵がしばらく考えてからぽんとひざをうち、輪の外に出た、というお話です。
つまり「剣の道」という輪の中でしか考えられなくなっているのではないか、輪の外に出てみなさい、という教えなのですが、このエピソードで糸川先生は「これからのリーダーは1日に何回か『輪の外』に出るべきではないか」と提言しています。
禅問答のようなお話ですが、こうしたエピソードは心に強く残りますよね。自分も武蔵のように円の外に気づける人間になりたいものです。
フランスの社会学者によると、社会から疎外されていると感じている人が一時的な集団をつくると異常行動を起こすことがわかっているそうです。具体的には「衝動的になる」「待つことができない」「自分が全能だと信じてすぐに行動に移す」「批判力がなくなり行動が過激になる」「他人を許さない」「残酷になる」といった特徴が出るらしいです。
都会で文明が発展しすぎるとこうした「自分が社会から疎外されている」と感じる人が増える傾向があります。そのために何をすべきかを考えなくてはいけない、と先生は提言します。
具体的には幼児期の教育から作り直すべき、という考えが紹介されていますが、現代の状況に照らし合わせると何ができるか、と考えてしまいますよね。人とのつながりを感じられる仕組みが今後ますます求められていくのでしょうね。
糸川先生は科学者でありながら「ずっと数学が好きではなかった。意味がわからなかった」と述べています。
しかし本書では「ようやく数学を学ぶ意味がわかった」と説明しています。つまり、「これができたら次はこれ、これもできたら次はあれ」と明確にレベルアップしていく実感を得られる学問だから、と結論づけています。たしかに社会や国語では主観がはいってしまうので誰もが納得する「レベルアップ感」は得られないでしょう。
あまり教育システムなどを語れる立場にはいませんが、この「レベルアップしたいと思わせる仕組み」は自分の子供(まだいないけど)や、これからの社会にとって重要なキーワードになるのではないでしょうかね・・・。いまの教育ってどうなっているんだろ、とちょっと考えてしまいます。
働きアリというのは実は1日の1/3の時間は働いていて、あとの2/3は遊んで暮らしているそうです。そこらへんを散歩にいったり、女王アリのひげをさわって遊んだりとか特に目的のないことをしているようです。
しかしこの働きアリを2つのグループに分け、1つのグループからは遊びの時間を奪ってみます(遊ぶ時間になったら狭い箱に閉じ込めてしまう)。そしてこの2つのグループのアリをある日、巣から遠く離れた場所に運んでしまいます。すると遊びの時間を奪ったグループは巣に帰ることができずに右往左往してしまったそうです。
この実験から先生は「無目的な遊びがないと環境適応能力が育たないかもしれない」と主張します。そして人間にとっての「無目的な遊び」とはなんだろうか、と考えます。ボーリングやスキーは目的をもった遊びです。そこで先生がたどり着いたのが「人にとっての無目的な遊びとは『愛』ではないか」という結論でした。
実験結果の解釈などについてはいろいろ意見があるでしょうが、「愛が環境適応能力を高める!」という主張にぐっと来まくりましたよ!(それだけ)
都市化が進むと疎外感が強くなります。そしてそうした社会ではレジャーや教育といったものが売れるようになります。しかし、そこでの問題は「それを買えば買うほどもっと欲しくなる」という点です。つまり「満足感が得られない時代」に突入しているのではないか、と先生は主張します。
これは現代を見ていてもそうですよね・・・。レジャーや教育が売れているかは別として、漠然と「もっと幸せになりたい」感が蔓延しているのではないか、と思います。このために人とのつながりだとか、情緒を満足させることが大事と先生は主張しますが、これは現代においても十分に通用するヒントだと感じました。
そしてそうした社会においてもっとも大切なのは「May I Help You?」の精神ではないか、と先生は続けます。つまり「他人のために何かをしてあげることで満足感が得られるはず」という主張です。
ただし、都市化がすすめばすすむほど「誰かのために役立つ経験が奪われている」とも先生は述べています・・・。これは確かにそうかもしれませんよね。そうした環境においても人が満足するにはどうしたらいいか、というのはじっくり考えるべきテーマだと思います。
そんなところですかね・・・すっかり長くなってしまいました。ずいぶん古い本なので、使われている語句になじみのないものも多いですが(かつ、そ、それはNGワード・・・という語句もちらほらw)、これからの時代を生き抜くヒントとしておすすめしておきます。
» 逆転の発想―社会・企業・商品はどう変わる? (1974年) (President books) [古書] (-)



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